心臓はいつも動いています。そして全身に血液を供給しています。
しかし、漢方ではもう一つ心臓には役目があると考えます。それは心を安定させる働きです。
心はいつも揺れ動いています。しかし、時には怒りや不安、悲しみや恐れによって心は大きく揺さぶられます。
感情が強くなると動悸がするのは、心の乱れの現われであり、その乱れを早く落ち着かせるために心臓が懸命に働いている証拠でもあるのです。
つまり心の乱れによって心臓も不安定になり、その不安定な状態を早く安定させるために動悸が起こるのです。
この時の心臓を安定させる力を神(シン)と言います。
神は心臓自体が創り出す力であり、全身のバランスを調える働きもしています。
この神は心だけでなく、魂も安定させるように働いています。西洋では神のことをコーザル体と呼んでいます。
魂を直接おおうことで、魂をいつ安定した状態に保っています。
神は魂と心をいつも安定するように働いています。
しかし、感情があまりにも強くなりすぎると、安定させることができなくなり、心臓は一時的に動きを止めてしまうのです。
何かショックなことがあると、気を失ってしまうのはそのためです。
しかし、ほんのわずかなことなので、命に別状はありません。
ただ、ショックがあまりにも大きいと心筋梗塞になり、命を落とすこともあります。
いかに早く蘇生させるかで、その後の予後がちがってきます。
漢方では、感情によって乱れた心臓の働きを早く安定させるために、ジャコウ鹿の精腺を昔から使います。
さらに牛の胆石である牛黄(ゴオウ)を併用することで、心臓をすばやく回復させてきたのです。
この二つの生薬が入ったものが救心感応丸氣(きゅうしんかんおうがんき)です。いざという時の特効薬です。
緊張が強い時、なかなか眠れない時、さらには不安やイライラが強い時にも使います。